2025年7月15日、日産自動車は追浜工場（神奈川県横須賀市）の車両生産を2027年3月までに終了し、生産を日産自動車九州（福岡県）に統合する方針を発表しました。この決定は、経営再建計画「Re:NISSAN」の一環であり、世界の生産拠点を17から10に削減する戦略に基づいています。追浜工場は1961年の操業開始以来、「ノート」や「リーフ」などの主力車種を生産し、日産のマザー工場として重要な役割を果たしてきました。本ブログでは、追浜工場閉鎖の影響と今後の展望について考察します。
追浜工場閉鎖の影響
1. 地域経済への影響
追浜工場は約3,900人の従業員を抱え、年間生産能力は約24万台です。閉鎖により、横須賀市や神奈川県の経済に深刻な影響が予想されます。
- 雇用の喪失：約3,900人の直接雇用に加え、関連サプライヤーにも影響が波及します。神奈川県内には日産のサプライチェーンに関わる2,030社、約15万3,000人の従業員が存在し、県経済の基盤を支えています。
- 企業城下町の変容：追浜地区は「日産の企業城下町」として発展し、地元の飲食店や商店は工場従業員に依存しています。閉鎖により、これらの事業が打撃を受ける可能性があり、例えば、工場近くの弁当販売店は注文減少を懸念しています。
- 地域振興の後退：日産は地域のイベントやスポーツチームのスポンサーとしても貢献してきました。閉鎖により、こうした地域振興活動が縮小する恐れがあります。
2. 日産の生産戦略への影響
追浜工場は電気自動車（EV）「リーフ」やe-POWER搭載「ノート」の生産拠点であり、日産の先進技術の中心でした。しかし、2024年の稼働率は4割前後、2025年7～8月には2割以下に落ち込む見込みです。
- 生産能力の縮小：追浜工場の閉鎖により、国内生産能力の約3割が失われます。日産は生産を栃木工場と九州工場に集約しますが、「ノート」の生産移管には設備投資と調整が必要です。
- 技術開発への影響：追浜工場には総合研究所やテストコースが併設されており、研究開発の拠点でもあります。日産はこれらの施設を生産機能とは別に評価する方針ですが、閉鎖により一部機能の縮小が懸念されます。
3. サプライチェーンへの影響
神奈川県内の1,757社が日産と取引しており、追浜工場の閉鎖は部品製造やメンテナンスを担う中小企業に影響を与えます。特に、生産設備や部品供給に特化した企業は受注減少や事業縮小のリスクに直面します。
4. 社会的・心理的影響
地元住民や従業員からは不安の声が上がっています。横須賀市の上地克明市長は、追浜工場の60年にわたる地域貢献を強調し、閉鎖への遺憾を表明しました。また、株主総会では経営陣に対する批判が噴出し、閉鎖方針への不満が顕在化しています。
今後の展望
1. 追浜工場の存続可能性
日産は追浜工場の車両生産終了を決定しましたが、台湾の鴻海（ホンハイ）精密工業とのEV生産協業の可能性が報じられています。鴻海との協議が実現すれば、追浜工場の設備や技術力を活用した新たな役割が生まれ、雇用の維持や地域経済への影響軽減が期待されます。
- 鴻海との協業：鴻海のEV生産ノウハウと日産のインフラを組み合わせることで、追浜工場の存続や再利用が検討されています。
- 研究開発拠点の維持：日産は追浜の研究所やテストコースを生産機能とは別に評価しており、技術開発拠点としての存続が期待されます。
2. 地域経済の再活性化
追浜工場の閉鎖が決定した場合、約169万平方メートルの跡地再開発が重要です。以下のような案が議論されています：
- テーマパークやサーキット場：海沿いの立地を活かし、騒音問題の懸念が少ないテーマパークやサーキット場への転換が提案されています。
- 新たな産業誘致：神奈川県や横須賀市は、代替産業の誘致や中小企業支援を通じて経済の立て直しを図る必要があります。県は日産の経営問題を受け、支援策を検討中です。
3. 日産の経営再建の行方
日産は2025年3月期に6,708億円の最終赤字を計上し、「Re:NISSAN」計画で生産能力を250万台に削減、固定費・変動費で約5,000億円の削減を目指しています。追浜工場の閉鎖はこれを加速させる一方、以下の課題が浮き彫りです：
- 自力再建の難しさ：ホンダとの経営統合交渉の破談や、米国・中国市場の販売不振が課題です。
- EV戦略の再構築：新型「リーフ」や「N7」などのEV投入で巻き返しを図るが、追浜工場の閉鎖により生産体制の再構築が急務です。
結論
日産追浜工場の車両生産終了は、地域経済、雇用、サプライチェーンに深刻な影響を及ぼしますが、鴻海との協業や研究開発拠点の維持により、影響の軽減が期待されます。地域は跡地再開発や産業誘致を通じて経済の再活性化を目指す必要があります。日産の経営再建は、構造改革と魅力的な新車種の開発が鍵を握ります。今後の動向に注目しつつ、横須賀市や神奈川県が地域の未来を築くための協力を進めることが求められます。
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